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評論

エンターテナー森光子の人生の玉手箱「新春人生革命」

ゴンドラに乗って登場した日本を代表する大女優、森光子が7メートルの高さを浮遊してみせる。その歌や語りに合わせて、舞台前面の水のカーテンがさまざまな文字や模様を描く。森が「祇園小唄」を歌い出せば、浴衣姿のジャニーズJr.たちが下駄でタップを踏み始め、やがて華やかなショー場面になる。
少女時代にターキー(水の江滝子)によるモダンなレビューにあこがれたという森と、ジャニー喜多川氏が用意したショーの趣向やスペクタクルな仕掛けとは、やはり予想以上に相性がいい。
相手役を務めるのはターキーならぬタッキーこと滝沢秀明である。「新春滝沢革命」では父と息子の絆が描かれるのに対し、「新春人生革命」では母と息子の絆が物語の縦軸となっている。ジャニー氏が森の自叙伝に想を得て構築した物語ではあるが、森の実人生そのものではな<、フィクションとノンフィクションが入り交じりつつ進行する。こうした手法は、ジャニー氏が滝沢の半生を描いた!「ONE!一一the History Of TaCkey-」(06年、日生劇場)と共通するものだ。芸を貫く京都の一座の女座長の姿に森の人生が重なり、座長に母の面影を追い求めながら役者魂を受け継いでいく若者との絆に現実の森と滝沢の関係性が浮かび上がる。滝沢は「滝沢革命」と同様に身体を張ったパフォーマンスを繰り広げ、森は鮮やかなエンターテナーぶりを見せたかと思えば、「放浪記」や「桜月記一女興行師吉本せい」の名場面を再現して、観客の心を惹き付ける。
エンターテインメントを愛する人間にとって、これ以上ないほどのぜいたくでうれしい作品に仕上がっていた。

シアターガイド2010/03

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ジャニー作品を彩るスターたち

ジャニー喜多川氏が作・構成・演出を手掛ける舞台には、いわゆる「ミュージカル」やレビュー」はこうあるべき……といった慨念を打ち破るさまざまな楽しさと驚きの仕掛けが随所に敗りばめられている。再演を重ね、恒例化した作品でも公演のたびに新しい試みを採り入れ、大胆なマイナーチェンジを繰り返していくというスタンスにもブレがない。数えきれないぼどのショーを観まくることで蓄えらられた演出や仕掛けの引き出しの多さもげ圧倒的である。ジャニー作品に主演するスターには、歌に演技はもちろんのこと、いろいろな種類のダンス、殺陣、フラインブ、ワイヤーアクション、イリュージョン、打楽器パフォーマンス、ジャグリングなどに幅広く取り組むことが求められる。「SHOCK」や「MASK」の初演時に座長を務めた少年隊をはじめ、「EndlessSHOCK」の堂本光一、「滝沢演舞城」「新春 滝沢革命」の滝沢秀明、「DOREAM BOYS」の亀梨和也などに共通しているのは、ジャニー氏の要求する芸事に懸命に挑むエンタテイナーとしての柔軟性とチャレンジ精神、それに多くの観富を惹き付ける魅力と華を併せ持っていることだろう。堂本光一による階段落ちや滝沢乃明の空中ダイブ、亀梨和也の綱渡りなど、あれだけのハードなアクションを毎回こなしてみせる芸人魂には驚くしかない。共演する彼らの後輩たちも、座長自らの身体を張った熱演を間近で観ることで、エンターテイナーとして必要なことを学びとっているのではないか。つまり、稽古期間も含めて、ジャニー作品は、ジャニー氏がタレントたちに理想のエンターテナー像を伝える貴重な場の1つになっているのである。
また、近年は少年隊・錦織一清も、「PLAYZONE2009太陽からの手紙」の作・演出、海外ミュージカル「SHE LOVES ME」の演出を手掛けることで、後輩たちにジャニーズ流 エンターテナー精神を伝える作業を行っている。
今、ドラマやバラエティーなどのテレビ、映画、CM、ラジオ、CD……と幅広いメディアでシャニーズのタレントたちかエンタテナーぶりを発揮しているが、その軸足的な役割を果たしているのが一連のジャニー作品だと僕は思う。そこには、ジャニーズ流エンタターテインメントの核となる要素が濃縮されてギュウギュウに詰まっているのである。

文=西条昇(ショービス評論家、江戸川大学専任講師)

シアターガイド2010/03

東京に喜劇志向の流れ 2007/04/16読売新聞夕刊

お笑い評論家の西条昇氏に、舞台のお笑い熱について聞いた。

「もともと舞台でお客さんを笑わせることに快感を得る喜劇人は、テレビのスタジオ観覧者を相手に笑いを取る以外に、自分の本領を発揮したいという気持ちが強い。テレビで毒のある笑いができなくなれば、なおさら。共演者や自分の体調によっても観客の反応が異なる舞台は、喜劇人なら血が騒ぐはず。視聴者も、テレビでファンになると、『単独ライブはどうだろう』 『もっと見たい』という欲求が出てくる」  「東京には、大阪の吉本新喜劇のような舞台の核が、久しく途絶えていたが、ここ10年ぐらいで伊東四朗さんや三宅裕司さんを中心に人材が集まり、喜劇を志向する流れができてきた。軽演劇、落語、演劇など各分野がミックスすれば、もっと面白い企画が生まれるはず」

お笑い評論家西条昇

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